ブロカントな家具達

以前、早稲田にスタジオがあった時は螺旋階段を登った二階にあり、古木を買い込み、戸やカウンターテーブルを作り、壁には土を塗ってシャビーな雰囲気にしていた。床や壁も好きな風合いに作っていた。

小石川のスタジオに引っ越してからも家具に関しては、色々と手の込んだ事をして、自分の好きな風合いを表現してきた。ここ数年は大人しくしていたが、今回、また創作意欲が湧いて来た。

今回は4つの1点モノの輸入アンティーク家具を買い込んだ。実際には「アンティーク」という言葉は100年以上前のもので骨董品を指す様で、古くて大事に使いこなされて来た家具という表現の方が正しいかもしれない。私が何もしなくても、十分に味がある風合いだった。しかし、ギャラリー全体のバランスとさらにシャビー&シックを表現しようと一手間、二手間を加えてみた。そしてブロカントな家具に仕上げてみた。

制作工程は、モノによって多少は異なる。

概要としては、まず、白いペンキで塗り、ヤスリで削っていく。ただ、ペンキを塗る際の刷毛のサイズ、塗った後の乾燥度合い、ヤスリの目の粗さによって微妙に風合いが変わってくる。また、ペンキが乾く前にウエスで拭き取り工程を入れる場合もある。この場合のウエスの湿り具合によっても風合いが変わる。ガストーチで木を焼いて風合いをコントロールする工程を入れる場合もある。元の家具の状態や目指すコンセプトによって微妙にアプローチをコントロールしたり途中で風合いの変化にアジャストしたりしていく必要がある。手袋をして作業をする事もあるが、微妙な風合い表現する為には、素手で触って感じながら行っていく方がいい。

この作業も写真撮影の際と同様に、まずターゲットイメージを設定し、その為のアプローチ方法の仮説を立て、実行に移し、検証していくしか無い。後は経験値で体に覚え込ます。人の話や本では無く、自分で発見すると応用が効くのでやるしかない。ただ、写真撮影と異なるのは、写真の実験はタダがが、元値が十分なアンティーク家具の場合は・・・。ペンキを最初に塗る瞬間に緊張が走る。



買い込んだアンティーク家具のみでは無く、従来から持っていた長椅子も表情を創り込んでみた。これに最も工数を掛けた。

元々、純日本風な風合いの椅子であったので、根本的にデザインを変えようと、電動ドリルや電動ヤスリを使用して、かなり肉体労働的にデザインを変える為の研磨工程を入れてみた。その後、表面のニスをヤスリがけによって落とし、ガストーチで焼いて古い風合いを作った。次にピンクのペンキ塗りを行い、乾燥させ、クラック塗料を塗る。次に白ペンキを塗ると表面がヒビ割れて、いい風合いになっていく。欲張って二度塗りしてしまうと無茶苦茶になってしまう。手作業のヤスリ工程で下塗りのピンクやその下の焼けた木の色を上手く出していく。ここまでだと、綺麗な可愛い女の子の部屋にある様な家具(←修飾される名詞に注意)になってしまうので、より使い込んだ感を表現する為にアンティークリキッドを使用し、ウエスで風合いを見ながら拭き取っていく。この工程により、多少のオフホワイトの塗料がよりダークブラウンの方向に変化していく。

出来上がりが下の写真。出来上がってみるとそれがどうしたの?かもしれないが、風合いや匂いがしっくりとギャラリーに調和した。


日本風の家具が創作ブロカントに変身した。

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