先日、カリグラフィー作品の複写撮影の依頼があった。
「カリグラフィー」(西洋書道)と始めて出会ったのは、私がアイオワ州フォートドッジ ( Fort Dodge , Iowa) のハイスクールに通っていた頃なので 30数年前になる。北欧系の親友の家に居候させて頂き、彼の母親、私にとってはホストマザーがカリグラフィーを仕事として行っていた。彼女は色んなイベントのポスターや招待状等の作成を請け負っていた。家のリビングルームのデスクやダイニングテーブルの上はいつも紙と筆、インクで一杯だった。当時はまだパソコンでは無く、文字はタイプライターで作成するのが主流であった。タイプライターだとフォントがいつも一定であり、スクリプト系等の飾り文字は表現できず、かなりビジネスライクに纏まっていた印象がある。私もタイピングのクラスを選択していたが、ただ、words per minuites の殺伐とした世界で何らクリエイティビティは感じなかった。
あのAppleの創業者のスティーブ・ジョブズ氏は学生時代に学んだカリグラフィーの美しい文字を表現したく、マッキントッシュのフォント充実に繋がったという話は有名。2005年のスタンフォード大学卒業式での彼のスピーチの中で「点と点を繋げる」という事例のひとつで話している。
今回、撮影当日に三戸美奈子さんがスタジオに作品を持ち込まれた時、作品を見た瞬間に30年数年前に毎日、カリグラフィー作品を見ていた日々の想い出が一瞬に蘇った。アメリカ中西部の保守的な家庭での日常が。
撮影は2階スタジオに登らずに1階にある外光の入るギャラリーで行った。外光はムラ無く光りが回るという利点があり、シャッタースピードを速くさせ作品のシャープさを増す為と陰影を補う為にストロボを補助光として使用して、ミックス光で撮影した。作品の紙が上質なテキスチャーのある厚めの和紙であったので、テカる事なく撮影する事ができた。
作品はかなり大きな物があり、それを平面に固定して、角度を計算し作品と垂直にして撮影する事に注意した。
RAWで撮影しているので、最適な色調と風合いに現像して Tif 形式に変換して、微妙なレンズ補正で水平垂直も合わせて行った。丸いレンズで四角い作品を表現するので、レンズ補正は避けて通れない細かい作業。大きく拡大すると和紙の作品はエッジをそのまま残して表現する事ができた。また、色転びしやすい微妙なグレーを一定に均等に同一色で表現するのに苦労した。
作品のほんの一部のみ画像にて紹介。
三戸美奈子さんと清水裕子さんのカリグラフィー作品展が東京と神戸の二カ所で展示会を開催される。
東京は2012年5月30日〜6月4日。@Azabujuban Gallery
神戸は2012年6月12日〜17日。 @GALLERY 北野坂
詳細は http://www.facebook.com/2012ia にて。
作品サイズはかなり大きく、使用している紙も立派なので、是非、現物を展示会にて!
三戸様:先日の撮影には最後まで画像確認や立ち会いお疲れさまでした。展示会での成功をお祈りいたします。