へアメイク作品の撮影は結構、頻繁に行っている。プロのへアメイクアーティストの作品系、美容室や美容師の販促系、美容学校の学生の授業の一環としての作品撮影等々。ブログでも過去、何度か美容系の作品は紹介してきた。
随分昔は美容系のコンテストというとカットコンテスト等の実技系中心だったが、ここ数年はフォトコンテスト形式のものも増えて来ており、美容作品も写真表現が重要な位置づけになって来ている。よって、写真の傾向も変化してきた。ヘアカタログ的な「物撮りポートレート」(←造語)系とでも言うのか、人物なのにマネキンの様に物撮りと捉えた写真は少なくなって来たと思う。
また、もう一つの傾向は、美容をヘアーやメイク、ネイルという様に部分的に捉えずに、衣装やアクセサリー/小物迄ふくめてトータルでのイメージを重視する傾向にある。美容界では当たり前の事だが、撮影者としては、そこにプラスして、風合いやイメージを具体的に創り込んでいく為に、背景、ライティング、Raw現像迄含めて表現コントロールをする事になる。
今回は美容学校の学生達の作品の一部を紹介してみる。
・自分の想いをカタチにするのはアーティストの仕事。
・他人の想いをカタチにするのはクリエイターの仕事。
・図面をカタチにするのはオペレータの仕事。
とすると、社会に出てプロの美容師になると、圧倒的にクリエイターの仕事が中心となる。人の話を聞いて理解して提案しながら技術を発揮して仕上げていく作業の繰り返しになる。通常のプロフォトグラファーの仕事と同様。
しかし、クリエイターも制限無しに自分の人間観や発想を発揮して、想いをカタチにしていくアーティストの仕事をする機会や時間は創出したい。自分のフレームを拡げる為にも。クリエイターの仕事のみでは枯れてしまう。
そう言う意味では学生の間に、自分の作品を創る機会というのは貴重な体験だと思う。素晴らしい授業であり、その撮影を担当させて頂くのは光栄だと思っている。
作品撮りの場合は「作品主」が自分の世界観や具体的希望事項を他の協業者に伝える必要がある。もし、フォトグラファーの作品撮りなら、フォトグラファーがモデルとへアメイク、スタイリストという協業者に伝え、動かす必要がある。自分の頭の中だけでイメージを持っていても、人に伝えなければカタチにならない。モデルの作品撮りなら、モデル自身がフォトグラファーとへアメイク、スタイリストに想いを伝える。今回は美容師の卵である学生達が自ら、コンセプトワークを行い、モデルをキャスティングし、スタイリストを兼務してアクセサリーや小物、衣装を探して、へアメイクをしながらモデルに想いを伝え、最後にスタジオ内でフォトグラファーにターゲットイメージを伝え、現場監督を兼務して、作品主としての仕事を行う。
過去に美容学校の教務の方々対象に写真の撮影ワークショップを開催した事もあり、写真自体や作品作りのワークフロー等の基本的な理解度を美容師の方々に伝える取組みを行っている。よって、その教務の方々が日頃から学生達に伝えて頂いているので、学生達もかなり写真に対してのオーダーが明確になって来た。数年前はスタジオに入ると、「カメラマンさんにお任せします」的なオーダー(?)が頻繁にあったが、今は殆ど無くなって来た。そして、日頃からファッションや美容系雑誌等の写真を見る機会が増えているのか、イメージや風合いのポケットをしっかり持っている学生が増えて来たと感じている。
具体的には、1階にあるフォトギャラリー全面を美容スペースとして開放し、2階にあるスタジオをモデルが照れない様なクローズな環境を作り撮影している。
一人の撮影の持ち時間や大道具/小道具や場所の制限がある中、皆、かなり工夫をしていると思う。私は自分が作品主では無いので、出来る限り、オーダーに忠実に撮影し、最後にプラスαの提案を混ぜながら撮影する事にしている。
若者達の発想や感性に接していると色々と勉強させられる事が多い。かなりの人数を繰り返し撮影していると、色んな事を肌で感じたり頭で分析したり出来て来る。例えば、経済環境等の時代の変化に伴う設定テーマの変化や気質、その相関関係、流行がある事に気付かされる。また、被写体となるモデルの外観と表情や持ちポーズの相関関係、人(=モデルやフォトグラファー)を動かしたり本気にさせる学生達の共通行動、自分がどんな美容師に髪をカットしてもらいたいか、学生の外見と選択テーマや希望する写真イメージとの相関関係等々。また、自分自身が好んで撮影する写真の風合いや構図、何に感動してシャッターを押すか等、自分自身を見つめる機会にもなっている。
皆、素敵な美容師になって下さい。応援しています。