去る2016年6月21日に、パシフィコ横浜にてPhotoNext 2016というフォトグラファーや写真館を対象とした展示会にて2つのセミナーの講師を行いました。
まず、展示会全体の主催者が企画する大会議場で開催のセミナーで、「ライティング」がテーマのセミナーでの講師を行いました。
対象は写真館のオーナー、撮影者、フリーのフォトグラファー等で、日本全国から来られ、受講者は約100名程度の規模でした。
チラシには「1灯から多灯を駆使する白いスタジオの魔法」と主催者側に書いてもらっています。歯の浮く様な台詞ですが、普段、普通に心掛けて撮影している内容であり、特にプレッシャーも何もありませんでした。(主催者HPの該当箇所 http://www.photonext.jp/#!feechargingseminar/i3aq5)
セミナー構成は、プレゼン、作品紹介、モデル撮影デモの3部構成。モデルの方にはテーマを設定し、3衣装での撮影を行い、効率よく、衣装チェンジの間にパワーポイントやトークで自分のライティングに関する考え方や具体的技術を体系的且つ、実践的に説明しました。
ストーリーの概要は、写真の原点であるライティングについて、写真スタジオ側の論理や事情で、被写体が誰であっても同一ライティングをせずに、被写体毎の求めるイメージや個性に合致させたライティングを行うと、他社や他のフォトグラファーと差別化でき、ビジネスの拡充に繋がるという内容です。プレゼンの為のパワーポイントもかなり体系的に作り込み、図解、写真等を含めてビジュアル的に作成しました。
モデルの方は以前に、あるイベントの出場者プロフィール撮影の為、私のスタジオに来られた方であり、印象が強く残っていた方なので指名させて頂きました。
よくライティングのセミナーに受講者として参加すると、バリエーションあるライティングを断片的に紹介する場合が多いのですが、今回は求めるイメージ(アナログ)と写真表現(デジタル)を結びつけ、自己の持つ技術に適切にアクセスしていく力を養う事が必要であるというストーリーの為、体系図に従って光を作り込んで行きました。下記が撮影したごく一部の写真です。
モデルの方とは表現したいイメージを一致して撮影に臨みたい為に、5W1Hで状況設定を行い、ライティング毎に伝えました。決して、ポーズや表情のオーダーはしませんでした。
ライティングによって、衣装、表情、ポーズが異なっているのが分かると思います。ライティングはストロボ設定単独で語るのでは無く、衣装、レンズ、露出設定、表情、ポーズ、構図等が一致して初めて伝えたいイメージがカタチになっていきます。
続いて、世界のストロボのリーディングカンパニーである、スウェーデン製のProfoto社のブースでセミナーを実施しました。
昨年の PhotoNext 2015 のProfoto ブースのセミナーでは、Profoto製ストロボを導入する事による効率面の向上について話しましたが、今年は機材による効率化によって創出された時間と機材のユニークな機能を活用しての作風の広がりについてセミナー内容を組み立てました。
(Profoto社HPの当イベントセミナーの該当ページ http://profoto.com/ja/profoto-japan/news-events/item/photonext2016-seminar)
Profoto製機材が導入されているスタジオ紹介、その機材のメリットを活用しての作品紹介等から入り、モデル撮影デモは求めるイメージとライティングの作り方と使用機材の特長を解説しながら行いました。
モデル撮影デモの最初は、モデルに全くイメージ設定を行わず、且つアンブレラをメインライトに、上からトップライトの2灯という平凡なライティングで撮影してみました。フォトグラファーとモデルの意思疎通も無く、ただ、フィギュアーのみを白バックの環境でアンブレラというオールマイティーなアクセサリーで、「とりあえず構図」で撮影してみました。
上記は「可もなく、不可もなく写真」なのか、何も伝わらない写真です。ファインダーの中にフィギュアーを入れ、適性露出で撮影しただけです。
次に、モデルの方に各々のライティング毎に求めるイメージを話し、意思疎通をとって撮影してみました。そして、機材は個性的なアクセサリーを使用して撮影してみました。
まずはProBoXというコントラストを抑え、均一なライトで美肌効果のあるアクセサリーを使用し、柔らかい風合いで撮影してみました。
そして、ダークで陰影のあるキャラクターを演出してみました。こちらはスモールフレネルという光の中央が強く、回りは減光していく個性的なアクセサリーです。同じ白背景ですが、暗くハードなイメージにしました。
最後に、力強さの中にビビッドでカラフルな演出をしてみました。メインライトはスモールフレネルのままですが、後ろにカラージェルのスポット系アクセサリーを背景の壁に当ててみました。こちらはHSS(ハイスピードシンクロ)という機能を活用し、F1.2の開放で、且つモデル50cm程度に強い光を出すフレネルやスポット系ライトであっても、白飛びせずに撮影する事ができました。スタジオ内でシャッタースピードも露出設定の武器にできるのは私にとって、業界にとってはゲームチェンジャーだと思います。こ下記写真は1/8000秒で撮影しました。
私もアウェーの特設会場という限られた環境での短時間のデモでしたが、ライティングのリハーサルはせずに本番に臨みましたが、仮説設定通りのアウトプットが出来き、満足でした。ほぼ妥協はありませんでした。しかもレフや黒板、デュフューザー無しで純正アクセサリーのままで使用できたので時短が図られ、展示会場のステージセミナーという短時間でも数パタンのライティングバリエーションが可能となりました。
これらの機材は自分のスタジオでも普段から使用している事もあり、デモ用の特別演出では無かったのもスムーズだった理由かもしれません。
最後に、撮影ライティングを変えると、世界が変わる(照明機材を変えると、ビジネスが変る)という当イベントのProfotoブースのキャッチコピーである ”Change the light, Change the world” に繋げて、セミナーでのプレゼンを終えました。
私も日常業務の中で感じているライティング創造の重要性や、技術面、ビジネス面について思う事を伝える事ができる機会となりました。
ご多忙な中、そして、多くの展示物やイベントがある展示会の中でセミナー参加頂きました、受講者、来場者の方々有難うございました。そして、ステージから見える熱心なリスナーの皆様の眼差しやうなずきに支えられました。また、PhotoNext主催者のプロメディア様、Profoto社の方々、モデル、ヘアメイク、アシスタントの方々のご理解とご協力に感謝します。