「素ナチュラル」をテーマとして作品撮りを行いました。
スポンサーのオーダーやアートディレクターからの指示の無い作品撮りを何度もすると自分の好きな画、自分のスタイルが分かってきます。
意味の無い演出や誇張したポーズを控え、素っぽく、ナチュラルで、被写体の素材感、個性を表現するのが私は好きな様です。また、被写体が画の中で主張しすぎず、浮かず、溶け込んでいる画づくりを好みます。撮影データをセレクトする基準もその様です。写真という音声の無いメディアの中で、「沈黙が語りかける」というイメージです。
モデルのセレクトも、何かに取組んでいる人が好きみたいです。撮影セッションの中で自分なりに、好みの表情やポーズがあり、捨てシャッターと本シャッターを棲み分けしている事にも気付いています。テーマやコンセプト、作品で「伝えたい事」「表現したい事」を伝えるとその世界観に入って行ける被写体を好みます。
今回はかなりシンプルでナチュラル、素っぽい画作りで素材のキャラクタを撮影しようと臨みました。
このテーマで4パタンの撮影を行いました。
最初はスタジオ外の外壁で撮影しました。
昼間の撮影でしたが、あえてストロボを被写体と壁に当てて、HSS(High Speed Sync.)モードにして、1/8000秒のシャッタースピード、ISO 100で、F1.2のレンズを日中でありながら開放で撮影してみました。季節感、時間感の無い画づくりが出来ました。ストロボは3灯使用し、被写体のすぐ後ろの壁へ強めの光(マグナム)、被写体へのメインライトは顔を中心に広めのスポット系(フレネル+バーンドア)、サブライトとしてスポット+GOBOで微妙な光の演出を行いました。
次に、同じ場所で、ストロボ無しで撮影しました。
夏の午後3時頃の季節感、時間感が表現されました。植物による背景へのテキスチャーや苔むした雰囲気は好きです。
次はメインで撮影したかったシーンです。夜の雰囲気をストロボで表現してみました。撮影事体は真夏の晴天日の午後4時頃です。
(F1.2, t 1/8000, ISO 500)
ストロボ3灯使用しました。この場合は奥行き感を演出する為、HSSでストロボを被写体に当てると奥がまっ黒に落ちるので、奥の植物や壁、窓に1灯強めで指向性のある光(マグナム+グリッド)をあてました。被写体のメインライトはフレネル+バーンドアを使用し光の指向性(範囲)をコントロールしました。そして木漏れ日を表現する為にスポット+GOBOで光に模様を付けました。被写体前のオリーブの木の模様が素敵な雰囲気を演出してくれました。さらにカメラ前にはシャワーで水をまいてみました。フォギーなフィルターの役割をしてくれました。
その後、スタジオでも同一のテーマにそって、撮影を行いました。
(f1.2, T 1/100, ISO 400)
基本的なライティングの狙いは、ストロボ光とスタジオの天井に常設の定常光のタングステン(オレンジ色のライト)とを空中で調合させ、今回はナチュラル系のセピアっぽい色合いを作ってみました。ストロボ光とタングステンのミックスの方法はかなりの要素があります。使用レンズによるF値設定、シャッタースピード、ISO等のカメラ側の露出設定、タングステンライトの調光、被写体と壁やストロボ等のポジショニングを微妙にヒストグラムを読みながらコントロールする必要があります。それにより、黒 〜 焦げ茶 〜 茶 〜 オレンジ 〜 ベージュ 迄の色合いを作ります。ターゲットとする色合いは、テーマやイメージ、形容詞によってマッチングさせて行きます。
被写体へのメイン光は柔らかく出力2WをさらにProBoxというアクセサリーで2段程落としました。f1.2で弱いライトで撮影しているのでタングステン光が上手く馴染んで調合してくれます。背後から被写体の髪にグリッドを付けてストロボをあて、髪の毛のエッジを演出しました。そして、前から被写体と背景までに微妙な光の模様でムラをスポット+GOBOで作ってみました。特に背景にはムラのカンバス地のロールスクリーンを貼った様な風合いを光で作ってみました。背景はロール紙でコントロールすると無限数を所持しなければならず、毎回、貼り直さなければならないのと、微妙なコントロールができません。白ホリを光でコントロールできるとかなり表現の幅が広がり、且つ、布や紙に比べ味があります。
今回のモデルは中川愛理沙さんで、テーマ通り、ほぼノーメイク、ノーポーズで撮影してみました。
次回は同じモデルの中川愛理沙さんの別のテーマでの作品を紹介してみます。
追記
今、露出設定の為のテストシャッターで白飛びの捨てRAWデータを現像してみました。すると鉛筆画の様な写真になりました。