4月22日(土)にポートレート撮影ワークショップを行いましたので内容をレポートします。
毎回、設定されたテーマをケーススタディとして、ライティングを中心に写真の画づくりをしていくシリーズもののワークショップです。今回のテーマは “重厚感のある大人ポートレート” – スポット系の多灯ライティングで陰影のある世界を創る -でした。
最初に簡単に参加者とモデルが自己紹介をした程度で、セミナー座学に時間を費やさない事にしました。ただ、少人数制なので、適切な内容のアドバイスや話ができる様に、一人ずつの写真に対する取組みと課題や学びたい事のみは伺い、押さえておきました。
スタジオに入ると、参加者でテーマの写真イメージについての意見交換から始めました。撮影する場合、被写体、撮影者や関係者の頭にあるイメージを一致させておく事から写真撮影のワークフローは始まります。モデルや撮影機材を前にして、カメラを握りながら話をしたり聞いたりする方が臨場感とやる気が出てきます。この段階で少しずつ、ターゲットとなるイメージが共有できてきました。
よく、ライティングはやっているうちにイメージが生まれ、臨機応変に感性で作っていくものと言う人がいます。その様な発言には笑顔で聞いているフリをしますが、全く共感はせずに他の事を考えています。イメージの目標設定ができない人の言い訳です。例えると、アイデアやデザイン力の無いタイプの美容師が、ロングを切っているうちに、ハサミが進んでいき、気が付けばボブになってしまって、「素敵なボブが出来上がりました」と言っている様なものです。(←フィクションの例え)これでは品質にムラが出てしまいます。
ターゲットイメージ設定後、ライティングを中心とした画づくりのステップに入ります。最初はレンズ選びとF値の設定です。その次はメインライトを決める事です。今回は参加者が自ら意見を出して、試行錯誤しながらライティングを作り込んでいく事にしました。
そこでメインライトに選ばれたのは 30cm×180cmの長細いソフトボックスです。そして、光の指向性を増し、背景に光が回りにくく白壁をダークグレーにする為に、グリッドを付け、更に光を集約しながらもコントラストが強くならない様にする為に、ストリップマスクという細いディフューザーを被せてみました。
メインライトが決まると、次はサブライトを足していきます。メインライトとの逆の髪の毛が影で潰れてしまわない様にアクセントとしてスポットライトを当ててみました。その時点の写真が下記です。
更に背景にスポット系のライトを中心に、参加者の意見を調整しながら、足して行きました。
撮影の際はヒストグラムを読みながら微妙にストロボの出力や被写体との距離、ISO値等を設定して行きました。
その都度、各ライトの役割や効果やマイナス効果を確認する為、パソコン画面を見ながら作業を進めて行きました。そして、皆で意見を出し合いました。
背景にもライトを入れて、演出してみました。
更に背景のライトに微妙なムラを入れてみました。
写真は1.レンズ〜被写体、2.被写体、3.被写体〜背景の3層レイヤーから成り立っているので、2と3にライトを入れた後に、1のレイヤーの演出として、レンズ前に、ある工夫をして、顔以外の箇所をエッジを出さず、且つ急激に意図的に落としてみました。ここで何をどの様に使用したのかは参加者のみのヒミツとさせて頂きます。
メインライトをバーンドアを取り付けたフレネルスポットにし、光を絞ったり、モデル自身の影を背景に入れたり外したりしながら模様作りもしてみました。サブライトとして演出用にスモールスポットに光のカタチをつけてみました。床に黒い布を敷いて光の反射を防いでみたり、色んな効果を試しながら、画作りをしました。
最後のメインライトはマグナムを使用しました。このアクセサリーはコントラストが強く、夏の太陽をイメージした光と影を演出する事ができるのですが、今回のテーマで使用する為に、ディフューザーを付けて陰影のエッジをソフトにしてみました。そして、モデルのポージングや顔の向きの許容範囲を広げる為に、逆から刺激の少ないProBoxを使用してゆるいライトを当てました。
ライトは同時に当てると効果が分かりにくく、且つ、バランスが取りにくいので、メインライトを設定した後に、少しずつモデルや壁とのポジショニングを考えながら、1灯ずつサブライトを増やして行き、バランスを取って行きます。
ワークショップ内では時間制約がある中、効率的に技術の習得を図れる様に演出した画作りをして行きます。しかし、決してライティングのレパートリーを持ち、演出する事が目的では無く、ポートレート撮影は被写体のキャラクタ(個性)を表現し、「伝えたい事」を明確にして、ストーリーとメッセージを最優先にする事が第一です。よって、参加者各自が各々のライティングの役割や何の為の演出なのかを理解しながら参加しなければ、実践の場で応用が効きません。
何かを習得していくには、2方向からアプローチがあります。1)考えて行動する事、2)反復練習によって考える事無く体に技術を覚えさす事。この2つのアプローチをワークショップを通じて経験して頂ければと思っています。
ワークショップの最後は、恒例の「お疲れ様写真」。
今回のモデルはウクライナ出身の15歳のAdelinaさんでした。事前オーディションを実施して選びました。オーディション時にテストシューティングをし、直感的に「持ってる」と感じました。フランス映画に出てくる女優の様な雰囲気。なぜ、テーマが「重厚感のある大人ポートレート」なのに15歳のモデルなのか。それは「大人」というのはコンセプトであり、年齢では無い事を彼女から学んだからです。
Adelina さん、ありがとう。そしてお疲れ様でした。
ワークショップ終了後はヒミツの「うふふ茶話会」でした。
“ 真面目過ぎるワークショップ ” のレポートでした。
参加者の皆様、お疲れ様でした。また、お会いできる事を楽しみにしております。
近々、次回のワークショップのお知らせを下記サイトで行います。
http://portrait-school.com/workshop.html