1月27日(土)に今年1回目のポートレート撮影ワークショップを実施しました。
今回のテーマは、「ライティングで表現する朝と夜 〜時間の表現方法〜」。
私は撮影する際に最初に考える事は「伝えたい事は何か」という事です。写真はビジュアルコミュニケーションであり、表現手段が写真というビジュアルであると捉えています。表現手段は文章や言葉、映像や音楽・・・等があり、カタチは様々ですが、その根底には共通して「何かを伝える」という主旨があります。
「伝えたいこと」の設定をすると、次はビジュアルにどの様に表現していくかです。その場合、軸をぶらさ無い様に、場面設定、5W1H(誰が、いつ、どこで、何を、なぜ、どうしたのか)の設定を行います。そこからブレークダウンし、具体的に画づくりをしていきます。今回は、その為に時間軸という切り口で、写真表現する際に必要なポイントをテーマとして、探求してみました。
まず、最初に参加者全員で、頭の中にターゲットイメージの設定を行う為の意見交換を行いました。オフ日に一人で自分の部屋にいるという設定です。それらの情報から、スタイリング、ライティング、表情、視線、ポージング等のポイントを押さえていきます。そして、レンズや絞り、メインライトのセレクトと設定・・・と具体的な機材設定に入って行きます。
そして、モデルにも、撮影者とイメージの共有を図る為に、ストーリーを伝えます。
最初は寝起きの朝から。
参加者が一人ずつ、順番に撮影していきます。
ベッドから起きると洗面所へ行きます。
そして、顔をチェックして、今日の自分に想いを語りかけます。
時間は経過し、正午頃に。
そして、午後3時頃。
午後、4時頃。
その後、薄暗くなり、部屋の電気を付け・・・。
同じ様な写真が並びますが、被写体の奥が徐々に光が落ちていっています。手前に外光が入る窓があるという設定です。そして、太陽光の色、部屋の間接光であるタングステン等の色温度が変わって行ってます。
夜、7時頃。
ライトの数、ライトのアクセサリーも色々と時間の経過に伴い変えて行き、更に、グリッドやディフューザー等によって何が変わるのか、光の向きによって風合いがどう変わるのかを検証して行きました。また、スタジオの環境光であるタングステンとの調光とシャッタースピードによる色温度のコントロールがかなり微妙でした。
更に、時間が経過し、夜9時頃。
そして、夜11時頃に就寝前に洗面所に。朝の洗面所のシーンとはライトの数、照らす場所や範囲、ライトのアクセサリーが異なります。また、モデルの表情や雰囲気も異なります。参加者そしてモデルに説明をしながら進めて行きます。
オフ日なのでウィークデイと異なり、ここ最近起こった事や明日の事etc.を考えて、自分と向き合う自分時間。
そして、就寝時間。夜11時頃。スポット系のライトなので、モデルの動きに追従する為に、参加者にライトの追従をしてもらいました。
ベッドに入っての考え事。
ライトを変えると毎回、パソコンにてアウトプット画像確認、検証、そしてフィードバック。
更に時間が経過。消灯して、深夜2時頃になると月の光のみ。メインライトもチェンジ。
深夜3時頃には目が覚め、また、自分時間が。このシーンもモデルに伝え、イメージを共有して、目を開けてもらいました。
朝、4時、5時頃になると、薄っすらと外光が。
これで一巡し、また、朝がやってきます。ただ、次の朝はたとえライトが一緒でもオフが終わっていたとすると、表情が変わっているかもしれません。(今回は季節軸は入れていません)
恒例のモデルと一緒に参加全員でお疲れ様集合写真を。
上の写真の左下には白い機材が。これを使用すると何も考えなくてもオートでライティングを作ってくれる新兵器です。・・・というのは冗談です。単なるヒーターです。1年で一番寒い季節なので、モデルの方も大変かと思い。
今回のワークショップは作品の設定時間帯によって、どの様にライティングを変えるのか、ライティング以外に変える要素はあるのかという事を中心の内容であった為、より比較して分かり易い様に撮影場所も同じ場所(ベッドと洗面所)と同じ衣装、そしてノーメイクにしました。そんな限られた条件の中でも出来る最低限のアートディレクションとして、時間帯に合わせて、服や靴下の着脱、脱いだ衣装の置き場所、髪を纏めたり下ろしたりと工夫してみました。モデルへの表情リクエストとコントロールはカメラマンとしてライティング以上に風合いに影響を与える重要な要素です。
ポートレート撮影はスナップ撮影と異なり、撮影者と被写体とのストーリーとターゲットイメージの共有を計り、撮影者の感性の基に色んな要素(←記載省略)をアンダーコントロールの状態にして画づくりをしていきます。
今回もシンプルな写真達を撮る事が出来ました。” I love simple photography.”
最後は、ギャラリーに移動し、まとめと質疑応答を行いました。
イメージをカタチにしていく為の考え方を図式にして説明をしている際のBTS写真です。写真撮影の技術とは、「露出設定」「ライティング」「構図、画角」「被写体のポーズ、表情」「現像、画像処理」そして、「機材(特にレンズやストロボアクセサリー)の特徴を知る」というくらいです。この部分はそんなに深い事では無く、理論の範囲内で、慣れや不慣れがある程度でカメラマンによって変わるものではありません。カメラマンによって全く変わるのは、感性(コンセプト作り、アートディレクション、アイデア etc.)の部分です。その「感性」をいかに「技術」にアクセスしていくか、適切にマッチングさせていくかが重要であり、カメラマンによって差が出てくる部分です。このワークショップの狙いは、「感性」→「技術」へのアクセス力を高める(適切&スピーディー)事です。
少なくとも、今回、参加された方は、メイクをガンガンにした水着にヒールの女性がベッドルームの中で腰に手を当てて気取ってカメラに視線を向けたありえないシーンの写真を撮影する事は無いかと思います(パロディー以外で)。(笑)
参加者の皆様、お疲れ様でした。撮影する際、時間設定というポイントや観点を持っている事が大事であり、傾向はあるものの、ライティング方法の正解は一つではありません。今回のワークショップで発見した事を、各々が自分の撮影の中で、自分の方法で画作りしていき、そして、趣味や仕事の中で活かして頂きたく願います。ワークショップに参加する事よりも参加後が大事なのでしょう。また、次回にお会いする事がありましたら、成果をお聞かせください。
model : Petra (Schönberg Models)
ワークショップレポート(画づくりのポイントを7つの項目毎に纏めてみました):http://portrait-school.com/corner68/day-night.html
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【告知】
次回のポートレート撮影ワークショップ開催予定は2018年4月21日(土)15-17:30
テーマは「絵画的表現の研究」。詳細は追ってお知らせします。
ポートレートスクール サイト:http://portrait-school.com
ポートレートスクール FBページ:https://www.facebook.com/portraitschool.tokyo/